彼女を手放せないのは、俺が臆病だからだ。


独りになるのが恐いからだ。


本気になれないのは、傷つくのが恐いからだ。




分かっている。


自分でもよく分かっている。



そして、彼女もそれを分かっているはずだ。




臆病なプライドが、自分を守るために幾度となく、彼女を傷つけていることを…



それでも傍にいるのは、彼女がそんな俺をいつも許してくれているからだ。





「今日はなんか優しくない?」


―そうか?


「なんかいいことあったの?」


―…別に何も?





そんな結論に達するから、気紛れにプライドを捨て、彼女を求めてみる。


彼女はそれを、嬉しそうに受け止める。



愛しい、と思う。





結局は、俺には手放せない。



そんな自分を許してしまうきっかけはいつも、彼女の優しい笑顔だったりする……


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