絆
修羅場
それは、とある日曜日の午後。
ファミレスの禁煙のボックス席でのできごと。
向かい合う男女。
深刻な面持ちで、周囲を気にしながらヒソヒソと話している。
「だから、悪かったって何度も言ってるじゃないか。」
うんざりとした口調でそう言う男に、女がキレた。
「そんなんだからいつまで経っても何も変わらないんじゃない!!!」
突然大声を出した女に慌てふためきながら、男は何とかしてその場を治めようとするが、女は聞く耳を持たない。
険悪なムードが漂っていた。
さり気なく、周囲もカップルから視線を逸らしている気配がまた、重苦しい空気を作り出している。
こんな、ドラマのような設定、現実で目の当たりにしようとは……
これが、いわゆる世間一般に言う、修羅場というやつか…と。
まるで他人事のように、その嵐の真っ只中にいる男は思った。
それは、とある日曜の午後。
ファミレスの喫煙の端の席で。
痛む頬をさすりながらタバコに火をつける男。
煙とともに、深いため息をつく。
苦い笑いを浮かべ、修羅場の味を男は今、知った。