絆
遠くで少女の髪が舞う。
天敵のいないといわれる人間だが、その中でも少女が生きることは同様に厳しいことかもしれない。
彼女はこれまでも、多くの好奇と嫌悪の視線に晒されてきたのだろう。
私はゆっくりと少女に近づいた。
小さな彼女を威圧しないように、隣りにしゃがみ込む。
「はじめまして。」
声をかけると、少女は不安そうに私の顔色を覗いた。
「……だ、れ?」
歳のわり拙い言葉で少女が言う。
その質問に笑顔で答えた。
「私の名前は辻村芙美絵よ。
今日からあなたの先生になるの」