絆
「おーい、どうした?」
困った表情で固まる彼に、何でもないと答えると、彼はため息をついた。
右脇のガードレールにひょいと腰かけて、彼はあたしを呼ぶ。
「おいで」
目の前のあたしをギュッと抱きしめた後でもう一度、どうした?と聞かれると。
ちゃんと答えなきゃいけない気分になって、胸がキュッとする。
「あのね。
いつもとりあえず一緒にいるけど。
好きになったのはとりあえずじゃないから…」
それを聞いて、彼は優しく笑ったまま頷いた。
「当たり前じゃん。
じゃなかったら、今頃とっくに帰ってるよ」
つまらない時間も、ムダな時間も、とりあえずの時間も。
2人で過ごすからいい。
そういうことかな…?
勝手に解釈して、また手をつなぐ。
「さっきね、向かいに座ってた女の子がすっごい可愛かったの」
「ふーん」
「家に持って帰りたいぐらい可愛くて、お人形みたいだった」
「あ、そ」
あたしのどうでもいい話に、どうでもよさそうに相づちを打ってくれる彼がいる。
そんな幸せを噛みしめた、火曜日の午後…