銀杏の花
朝9時から夕方4時までが
私の“早番”勤務時間。
3時半から自分の売ったドリンクを集計して
店の奥にある事務所に書類を提出する。
暗証番号を入力して
分厚いドアをノックした。
コンコンッ‥
『失礼しま〜す』
事務所に入り役職の人に書類を渡して
ミスがないか確認してもらう。
確認してもらっている間の時間が
私は好きだった。
「‥お疲れ様です」
大きな目に白い肌。
背が高くて少し真面目そうな副主任が
タバコを吸いながら私に話し掛けてくれる。
『あっ‥お疲れ様です』
優しくて面白い副主任。
口数は少ないけど、この数分間だけ
一言二言の会話で私は満足だった。
集計確認が終わってタイムカードを押し
私は挨拶をして事務所を出た。
胸がグッとなって耳が暑くて
きっと顔が赤くなっていたんだと思う。
私は足早に歩いていた。