夢の彼方
「優奈が演じるのは事情があって日本の警察を辞めなければならなかった女刑事で、彼女のことを日本の警察の彼女の元上司から推薦されたニューヨーク市警のランディ・リーフ警部がラボに引き抜く―――というところからドラマは始まる。理由は彼女―――えーと、名前は『西宮蘭』。蘭が大学で化学を専攻していたってことらしい。大学で優秀な成績を修めた彼女なら、ラボでもいい仕事をしてくれるだろうということで引き抜いた、というところみたいだな」


「なんか―――凄い重要な役な気がするんだけど」


「もちろん。今回のシリーズはこの蘭の活躍を軸に進んでいく予定なんだ。他の出演者は前回までのレギュラーがほぼ出揃う。前回最後に殉職した女性刑事役の二ーナ・アシュレイを除いては他の役者に変更はないってことだ」


そんなすごい役だったなんて。


だって、ドラマに出られるっていうだけですごいことなのに。


わたしみたいな駆け出しの女優が、そんな大役もらってしまっていいんだろうか?


ていうか、そんな重要な役が、果たしてわたしに務まるのだろうか。


ごくりと唾亜を飲み込む。


背中を、冷たい汗が伝っていく。


今まで、与えられた仕事を一生懸命わたしなりに務めてきたつもりだけど。


今度ばっかりは一生懸命やるだけではどうにもならないことがありそうで。


気づけば、体が震えだすのを止めることができなかった。


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