夢の彼方
「あ―――うん。これは内緒だけど、彼とは、その―――」


「付き合ってる?」


「え―――なんでわかるの?」


わたしは驚いて兄を見た。


「まあ、何となくかな。お互いにすごく大事な物を見るみたいに見てたから。子供たちとも仲いいみたいだし、いいんじゃないか?結婚は?」


「それはまだ、考えてない。子供たちはいつでもどうぞなんて言ってるけど―――。今の距離が、ちょうどいいかなって思ってるから」


「ふーん、そうか。焦る必要はないけどな。何かあったら連絡しろよ」


にっこりと微笑むその顔は、昔から変わらない優しい兄の笑顔で。


なんだかほっとした。


空港であんなことになって、なんだか自分の周りが変わっていってしまうような気がしてたから・・・・・。


それからわたしたちは母の墓参りに行き、兄の奥さんが準備してくれていた食事を共にし、再びホテルに戻ったのだった・・・・・。


車の中で、すでに子供たちはうつらうつらしていた。


「いいお兄さんだね。奥さんも明るくていい人だ」


レジーの言葉にわたしは頷いた。


「うん。兄は、すごくまじめでちょっと硬い人だったんだけど―――明るい奥さんもらって、いい感じに丸くなったみたい。今度、うちにも招待したいな」


「そうだな」


兄弟たちをアメリカの家に招待して―――


そんな光景を、わたしは心に描いていた・・・・・。
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