夢の彼方
「どうして―――」


「あら、来ちゃいけなかった?優奈さんとは私も同じ職場にいた仲だもの。優奈さんのお母様のお通夜に伺ったっていいでしょう?」


そう言って千鶴さんは名簿に筆ペンを走らせた。


腰のあたりまで伸びた黒髪。


すらりと背が高く細身にぴったりとしたパンツスーツがキャリアウーマンらしく決まっていた。


同じ職場で働いていたといっても部署が違っていたためほとんど話したこともなかったが―――


「わざわざありがとうございます」


そう言って私が頭を下げると、千鶴さんがちらりとわたしを見た。


「ご主人が亡くなって、お母様まで・・・・。とても大変だとは思うけど。うちの主人はいつ返してもらえるのかしら?」


その言葉に。


その場の空気が一瞬にして凍りついたようだった・・・・・。
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