夢の彼方
「あの―――タケル君には倉庫での出荷作業をやってもらっているんです。わたしは自宅の方でパソコンを使った作業が多いので・・・顔を合わせるのは伝票の受け渡しをする時くらいで、ほんの2,30分くらいなので」


「あ、そう・・・・・。その作業、あなた1人でできないの?」


「あの、今まではちょっと・・・・でもこれからはわたし1人でやりますから」


「それなら、もうタケルさんの協力は必要ないわよね。もう、わたしたちには近づかないでもらえるかしら?」


「はい・・・。わかりました」


「あいつのことなら気にするなよ。1人で仕事を続けるなんて―――」


千鶴さんが焼香をしに中に入ってしまうと、タケル君がそう言った。


「そう言うわけにはいかないでしょ。今まで十分すぎるほどタケル君には助けてもらったから。もうこれ以上、迷惑はかけられないよ。タケル君にも、千鶴さんにも・・・」


「優奈・・・でも俺は」


「お願い。これ以上千鶴さんを悲しませるようなことしちゃダメ。わたしは平気。タケル君のおかげで仕事も大分楽になったし、これからは子供たちにも手伝ってもらうから」


「だけど俺は―――」


その時、中から千鶴さんが出てきた。


「タケルさん、帰りましょう」


「―――今まで、助けてくれてありがとう」


そう言って私が微笑むと、タケル君は諦めたように溜息をつき、千鶴さんと一緒に行ってしまったのだった・・・・・。


これでいい。


タケル君には十分すぎるほどよくしてもらった。


これ以上あの人の生活に踏み込んじゃいけない。


これ以上は―――
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