夢の彼方
だけど、それだけでは終わらなかった。


母の初七日が終わり、わたしは子供たちを連れて家に帰り、翌日から再び仕事を始めたのだけれど。


倉庫で出荷の作業をしていると、そこへタケル君が姿を現したのだった。


「―――どうしたの?」


驚いて目を見張るわたしに、タケル君は言った。


「やっぱり気になって。お母さんが亡くなって、心労だってあるだろう?それにまだお前の具合だって十分元に戻ったってわけじゃない。もう少し、俺にも手伝わせてくれよ」


「そんなこと―――わたしは大丈夫だって言ったでしょ?奥さんは知ってるの?タケル君がここに来てること」


「―――あいつのことは、気にしなくていい」


「そういうわけにはいかないってば」


わたしは溜息をついた。


「ねえ、もうこれ以上わたしに関わっちゃだめだよ。いくら友達でも―――奥さんはわたしたちのこと疑ってる。これ以上かかわったら―――タケル君の家が崩壊しちゃう」


「大丈夫だって。一応怪しまれないように千鶴には言っておかなくちゃと思ってたけど、言わなければどこでどうしてるかなんてあいつにはわからない。ちゃんと仕事はするし、お前にはもう迷惑かからないようにするから」


「でも―――」


「とにかく、俺が手伝いたいと思ってるんだ。給料くれなんて言わないから、好きにさせろよ」


そう言って作業を始めるタケル君。


そりゃあ出荷作業は力仕事だし。


手伝ってくれればとても助かるのだけれど。


わたしは千鶴さんのことを思い出していた。


わたしのことを睨みつけていた、あの時の彼女を―――
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