夢の彼方
「お義母さん・・・・・」


「ごめんなさいね、優奈さん。あなたのせいじゃないってことはわかってるの。年が離れてるせいか、信次のことを溺愛してたから―――悪気はないのよ」


そう言った義母も、泣きはらした目をしていてとても辛そうだった。


信次を溺愛していたのは義母も同じだろう。


信次が亡くなってすぐ。


病院に駆け付けた義母は言っていた。


「お金に困っていたのなら、言ってくれれば援助したのに―――どうして何も相談してくれなかったの。夜も働いていたなんて・・・・・」


わたしが責められたわけじゃないけれど。


やっぱり、心が痛かった・・・・・。


「本当に、何か手伝えることがあったら言ってくださいね」


「お店のことでもなんでも、手伝いますから」


葬儀が終わってみんな帰るころ。


信次の友達が数人、そう言ってあたしの手を握っていった。


それを少し離れて見ていたタケル君が、彼らがいなくなるとすっと傍に来て言った。


「気をつけろよ」


「何を?」


「お前を、狙ってる」


言われていることの意味がわからなくて。


「何を?」


首を傾げて言った。


「お前の気を引こうとしてるってことだよ。気をつけろよ」


「まさか。単なる親切心で言ってくれてるだけでしょ。もうわたしも38だよ。今更3人の子持ちの女なんて誰も口説かないでしょ」


わたしの言葉に。


タケル君は呆れたような顔で、わたしを見つめていた・・・・・。


でもそんなタケル君の言葉が、現実のものとなる。
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