夢の彼方
『さあ、行こうか』


目の前の黒人が、にっこりと人なつこい笑顔でそう言った時


『―――アクション!』


どこからか声が響き―――


突然セットの中にいた人たちが動き始めた。


扉を開けて出てくる人、ナース姿で走る女性。


そして目の前の黒人男性は白衣を着てわたしを見つめていた。


『あんたはどこの国の人だい?』


何を聞かれているのかは、簡単な英語だったのですぐにわかった。


わたしは考えるよりも早く、さっき見せられたセリフを口にしていた。


『わたしは日本人です』


と―――


「合格だって」


レジーの言葉に、あたしは目を瞬かせた。


「―――何が?」


「だから、今の」


「今のって―――何かのテストだったの?」


あたしの言葉に、レジーはちらりとあたしを見て。


「オーディションだよ」


「―――――ええ!?」


さっきのが?


セリフを一言、言っただけの、あれが?


ていうか、なんのオーディション!?

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