夢の彼方

実は子供が泣くシーンでは、リアリティを出すために、里菜以外には内容を伝えていなかったのだ。


そのため、あまりに緊迫した空気に紗菜も瑠加もわたしが本当に怪我をしたと思い込み、泣き出してしまったのだ。


もちろん病院はセットだし、カメラなどの機材もたくさんあったのだけれど、現場の独特の世界に飲み込まれてしまったよ

うだった。


撮影が終わると、『騙すなんてひどい！』と怒っていた紗菜だけれど、監督はいいものが撮れたと大喜びで、子供たちをべ

た褒め。


アメリカ人らしく大袈裟とも思えるようなゼスチャー入りで褒めたおされて、瑠加は途端にご機嫌。


紗菜も褒められて悪い気はしなかったのか、『また出てもいいけど』なんて言っていたのだった・・・・・。


日曜日、わたしたち3人はレジーの車に乗り、CMの撮影現場に向かった。


インターナショナルな感じで―――


というクライアントの希望通り、そこには国際色豊かな親子ばかり50人ほどが集まっていた。