過去作品集○中編
女の子の腕の中がこんなに心地いいって事、今まで知らなかった。
暖かくて柔らかくて……
癖になりそうだよ
『ん……朝……?』
夕べ、カーテンを閉め忘れたんだろう。
窓から差しこむ朝日が眩しくて目が覚めてしまった。
隣には、クウクウと幸せそうに眠る桜が……
『……行ってきます』
桜を起こさないよう、そっと布団を出て仕事に向かう。
歯を磨こうと鏡の前に立った時、頬に残る涙の後が見えた。
まだ幼い女の子の胸を借りて涙を流すなんて……
マジで情けないよ、俺……
『お疲れ様でした』
夜になって仕事が終わる。
なんとなく家に帰るのが恥ずかしいような気がして足が重い。
桜は気付いていたんだろうか。
二十歳にもなる大の大人が泣くなんて、どう思っただろう。
『……土産でも買ってくか』
一応、お礼もかねてプリンでも買っていこう。
きっと、嬉しそうに笑ってくれるだろうから……