過去作品集○中編

『そんで? 俺に何か用だった?』

テーブルにドンッとコーヒーの入ったコップを置いて、言った。

『公園でちゃんと話せなかったから…… だから、ちゃんと話そうと思って』

話?
メールの時も思ったけど、ユカは俺に何を話そうとしてるんだろう。

堕胎の費用の話か?
それとも、文句言いにきたのか?

『何だよ、早く言えよ』

考えてもわからない……

『あのね。 私達、やり直せないかな』

『……え?』

やり直す?
また恋人として?

『ははっ、困るよね? 妊娠なんかした面倒な女』

『馬っ鹿野郎! 孕(ハラ)ませたのは俺だろ!』

面倒とか思うわけない。
むしろ、ユカがいなくなって寂しいと思ってたのは俺の方で……

『翔、ありがとう』

ユカは嬉しそうに笑うと、軽いキスをした。

『ちょ……それは都合良すぎるだろ』

お互いの顔を見合って笑った。

俺達はまた、一緒に歩いていける?

同じ過ちを犯さないよう、2人で頑張っていける?

そんな疑問とも不安とも思える感情が消えない……






『翔、ごめん…… 友達が家に来るからもう帰らなきゃ』

『うん、またメールするよ』

わずか10分という短い時が過ぎ、ユカは玄関へと向かった。

『あ、まだ桜が下にいたらさ…… 早く帰ってこいって言っといて』

『ふふっ、可愛いんだね。 顔に書いてあるよ?』

可愛いとか急に言うから、どんな反応していいか困るよ。

可愛くないと言ったら嘘になるし……

『じゃあ、またね……』

って、変な誤解したまんま帰るなよ!
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