過去作品集○中編

『どうも初めまして~。 翔の彼氏の達也です』

なんて馬鹿な紹介をする達也に、桜は目を丸くして固まっていた。

そりゃそうだ。

金髪ならともかく、銀髪。
ピアスだらけの耳。

普通の女なら、恐がるのも当たり前だ。

『だから隠れとけって言っただろ?』

『う、うん』

まぁ、今さら後悔したって遅いんだけどね……

『桜ちゃんは翔のこと好きなの?』

『えっ!?』

いきなりの質問に、桜も俺も驚きの声を上げる。

『翔には彼女がいます』

『え~、奪っちゃえばいいじゃん』

『そんなっ!!』

あー、笑えない。
笑えないよ、達也。

過去の話だが、達也と俺には恋愛に対して因縁がある。

自分の彼女が俺と浮気をしている。
そんな馬鹿な事を、達也が一方的に思っていた。

結局、俺は達也の不安に気付けず、彼女の相談にのっているうち、恋人を奪う結果になってしまったんだ。

だから達也の「奪う」という単語には、一生笑う事ないんだと思う……


『つーか、喉かわかない?』

人が反省してるのも知らず、話が飛び飛びなんですけど……

『達也。 それって俺に買ってこいって事?』

わざと不機嫌そうにみせて言うと、達也はニヤニヤと笑った。

『わぁったよ。 適当に買ってくる』

ったく。
我が儘なんだから……

俺が負い目あんの利用してるだろ、絶対に。
< 18 / 120 >

この作品をシェア

pagetop