過去作品集○中編
『どうも初めまして~。 翔の彼氏の達也です』
なんて馬鹿な紹介をする達也に、桜は目を丸くして固まっていた。
そりゃそうだ。
金髪ならともかく、銀髪。
ピアスだらけの耳。
普通の女なら、恐がるのも当たり前だ。
『だから隠れとけって言っただろ?』
『う、うん』
まぁ、今さら後悔したって遅いんだけどね……
『桜ちゃんは翔のこと好きなの?』
『えっ!?』
いきなりの質問に、桜も俺も驚きの声を上げる。
『翔には彼女がいます』
『え~、奪っちゃえばいいじゃん』
『そんなっ!!』
あー、笑えない。
笑えないよ、達也。
過去の話だが、達也と俺には恋愛に対して因縁がある。
自分の彼女が俺と浮気をしている。
そんな馬鹿な事を、達也が一方的に思っていた。
結局、俺は達也の不安に気付けず、彼女の相談にのっているうち、恋人を奪う結果になってしまったんだ。
だから達也の「奪う」という単語には、一生笑う事ないんだと思う……
『つーか、喉かわかない?』
人が反省してるのも知らず、話が飛び飛びなんですけど……
『達也。 それって俺に買ってこいって事?』
わざと不機嫌そうにみせて言うと、達也はニヤニヤと笑った。
『わぁったよ。 適当に買ってくる』
ったく。
我が儘なんだから……
俺が負い目あんの利用してるだろ、絶対に。