過去作品集○中編

達也の話はいつまでたっても終わらなくて、気付けば夜中の2時を回っていた。

『眠ぃー……だりぃー』

達也はソファーにドカッと寝転ぶ。
つか、聞いてるコッチがだりぃよ……

ふと隣の桜を見るとうつむいて黙っていた。

『桜? 寝てる?』

返事がかえって来ない。

『桜ちゃん寝ちゃったねぇ…… やっと2人きりの時間が来たね』

『アホか。 俺も寝るっての……』

『何だよー! せっかく親友が遊びに来たのに!』

馬鹿みたいに頬を膨らます達也。
子供かよ、お前……



チッチッチ……
って、時計の音だけが妙に響いてる。

『あんな? 俺、今からめっちゃ真面目な事言うけど』

と言う達也の顔は本当に真剣だった。

『桜ちゃん、本当に産む気なの?』

『……さぁ』

『産むにしても堕ろすにしても、お前は一緒にいる理由ないんだからな?』

最もな意見だった。
たまにはちゃんとした事言うじゃん。

でも、それには従えない。

『俺が追い出したら、こいつ居場所なくなるから』

『お前なぁ!?』

達也は大声を張り上げる。

『しっ! 桜が起きるだろ?』

『あ、ごめん……』

達也はハッとしたようにソファーに座り直した。

『そんなに好きなら好きにすればいい。 だけど先にやる事があるだろ』

まだ、好きなんて言ってないじゃん。
それに、俺にはユカが……

『桜ちゃんのお腹の中の子が本当にお前の子じゃないなら、きちんと手術するんだ』

『……本当にって……』

桜とは、本当に関係を持ってない。
腹の子も、自分の子じゃない自信がある。

だけど、だからこそ言えない。
堕ろせなんて言えないよ……

自分の彼女よりも言いづらいなんて、こんな事って有りかよ……
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