過去作品集○中編
どうして桜を怒らせてしまったのかが、解らない。
でもここで逃がしたら、もう二度と捕まらない気がして、一心不乱に桜を追い掛けていた。
『待てよ!! 何で怒るのか解んねぇんだけど』
ようやく階段の踊り場で捕まえ、腕を強く引っ張った。
『翔には一生わかんない! ああゆう事に、どれだけ傷付くか』
傷付くとかって……
俺のが傷付くっての。
『翔は、本気で人を好きになった事なんてないでしょう!?』
何だと?
何でこんな話になるんだ?
指輪がそんなにも悪い事だったのか?
あんなに喜んでたのに……
『もう離してよ!!』
桜は大きな事を上げ、バッと腕を振り払う。
それが、一大事へと繋がる。
腕を払ったままバランスを崩し、階段を踏み外してしまったのだ。
『ッ桜!!』
ゆっくりと時が進む。
助けようと伸ばし、一度は桜に触れた手は、落ちる勢いに負けて桜を逃がしてしまう。
間に合え。
間に合ってくれ!!
腕が駄目なら体ごと……
考えてとった行動じゃなかったけど、先に落ちた桜に追い付けるよう、勢いをつけて飛び出した。
たった数秒の出来事。
だけど、まるでコマ送りのように進む時の中、俺の腕は小さな体を抱きしめる事に成功したんだ……
『翔! 翔!!』
打ち付けた背中が痛くて起き上がれない俺を揺さ振り、桜は涙を流す。
『桜ぁ……』
こんなに簡単な事だったのか。
俺は桜が大切で、絶対に失いたくない。
桜が危ない時は、命に代えても守ってあげたい。
桜には、一生笑っていてほしい。
『俺…… 桜が好きなんだ』
人は、これを「愛」と呼ぶんだ……