過去作品集○中編
『ほんじゃ、またな~』
日付けが変わる頃。
酔っ払う手前の達也を家まで送り帰した。
冷たい冬の風がビュウビュウと吹く中、前屈みになりながらマンションへと戻る。
途中、歩道橋にある一つの人影に気付いた。
歩道橋の上から通りの多い国道を見つめ、今にも飛び降りそうな顔をした女。
というか、女というにはあまりにも幼い。
15、6くらいだろうか。
きっと高校生だ。
『……もう……家に帰れないよ……』
近付いてみれば、そんな台詞。
『あんた、そっから飛び降りとか考えてないよな?』
ほっときゃいいって思ったけどさ。
もし本気で飛び降りられたら最後の目撃者とかになりそうだし。
『考えてない……と思います』
『ならいいけど』
つか、思うって……
超不安なんだけど。
『家出?』
『ふふ、そんな感じかなぁ……』
何を話すわけでもないけど、しばらく他愛のない話をした。
お互い名前も知らないのに……
『俺はそろそろ帰るね』
流石に明日の仕事に響くような時間になってきて、彼女に別れを告げる。
『アンタどうするん?』
しかし、ほっとけないのが、俺の駄目な所だ。
『……帰るとこないもん』
案の定、帰る気ないみたいだし……
どうすんだよ、ったく……
『……雨……降りそうだし俺んとこ泊まる?』
正直すっごく迷った。
だって今日会ったばっかの女だし。
こんな子供、誘拐だと思われたら嫌だし。
『あ、でも安心してよ。 俺、子供には興味ないしさ』
ナンパだと思われても困るしさ……