過去作品集○中編

『ほんじゃ、またな~』

日付けが変わる頃。
酔っ払う手前の達也を家まで送り帰した。

冷たい冬の風がビュウビュウと吹く中、前屈みになりながらマンションへと戻る。

途中、歩道橋にある一つの人影に気付いた。

歩道橋の上から通りの多い国道を見つめ、今にも飛び降りそうな顔をした女。
というか、女というにはあまりにも幼い。

15、6くらいだろうか。
きっと高校生だ。

『……もう……家に帰れないよ……』

近付いてみれば、そんな台詞。

『あんた、そっから飛び降りとか考えてないよな?』

ほっときゃいいって思ったけどさ。
もし本気で飛び降りられたら最後の目撃者とかになりそうだし。

『考えてない……と思います』

『ならいいけど』

つか、思うって……
超不安なんだけど。

『家出?』

『ふふ、そんな感じかなぁ……』

何を話すわけでもないけど、しばらく他愛のない話をした。
お互い名前も知らないのに……


『俺はそろそろ帰るね』

流石に明日の仕事に響くような時間になってきて、彼女に別れを告げる。

『アンタどうするん?』

しかし、ほっとけないのが、俺の駄目な所だ。

『……帰るとこないもん』

案の定、帰る気ないみたいだし……

どうすんだよ、ったく……

『……雨……降りそうだし俺んとこ泊まる?』

正直すっごく迷った。
だって今日会ったばっかの女だし。

こんな子供、誘拐だと思われたら嫌だし。

『あ、でも安心してよ。 俺、子供には興味ないしさ』

ナンパだと思われても困るしさ……
< 3 / 120 >

この作品をシェア

pagetop