過去作品集○中編


あれから2年……

俺は、桜と過ごしたアパートを去る事になった。

桜はどうしてるって?

彼女は……


『翔、見て見てっ!』

今年、高校を卒業する事が出来た。

『うん、卒業おめでとう』

嬉しそうに見せる卒業証書。
俺のマンションにいた数週間もの間、学校を休んでいた彼女は、人より何倍も努力して卒業式を迎えた。

『だいぶ片付いたねぇ』

寂しくなった俺の部屋を見て言う桜。

『うん。 後は小物を片づけるだけ……』

正直、引っ越す必要は全くなかったのだけど、
仕事場に近いマンションを見つけてしまったら、そこに移動したくなったんだ。

『私、コーヒーでもいれるね』

『じゃあ俺は部屋で片付けしてるから』

桜の頭をポンポンと押して俺は部屋に入った。


要らない物はゴミ袋。
要る物はダンボール箱。

大分片付いた所で、一息つこうと部屋の真ん中に腰を下ろす。

『……ん?』

ふと目に入ったベッドの下の丸まった物体。
引き出してみると……

『げっ…… あん時のジーパンじゃん』

「あの時」とは、桜が病院に運ばれたあの時……

こんな血のついたジーパンが2年も部屋に眠っていたなんて……

『……うん、捨てるか』

結論が出るのは早かった。

だって今さら洗っても落ちんし。
ゴミだろ、ゴミ。

……と、思ったら、中から何やらピンクの箱が……

『これって……』

床に転がった物は、何だか懐かしい物だった。


『翔ー。 コーヒーはいったから休憩しよう?』

その時、リビングから桜がひょっこり顔を出した。

俺はピンクの箱をポケットにしまい部屋を出た。
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