過去作品集○中編
『達也ー、今日遊びに行っていー?』
放課後になると、達也の周りは人だかり。
こうして女の子から誘われる事も多かった。
容姿もだけど、誰にでも懐く明るさが、達也が人気な理由。
そして……
『おー、彼女送ったらな』
私の不安な部分だった。
「彼女がいるから無理」
そう言ってほしかった……
そんな私に、いつしか達也専門の相談相手が出来た。
『私ってワガママかな』
それが達也が特別扱いしていた親友、翔くんだった。
『達也がもう少し考えなきゃいけないんだよ。 亜由美は悪くないよ』
いつだって優しくて、頼れるお兄さんのような人。
正直、どこか惹かれていたのは間違いなかったと思う。
ある日の事だった。
いつものように達也の家に遊びに行った。
『いらっしゃい』
いつもはいない家の人が、笑顔で出迎えてくれた。
若くて、綺麗な女の人。
そして……
『もう…… 子供がいるならいるって言ってよー』
奥には達也によく似た男の人……
『違うって、甥だよ甥。 妹が早くに亡くなって預かってんだよ』
男の人はそう言って、女の人の肩を抱く。
その手つきが妙にいやらしくて、目を反らしたくなった。
『あれ、親父の女』
『え?』
『親父に妹なんていねーよ。 あいつが俺の親父』
すごい家だと思った。
平気で嘘を並べ、息子の存在も否定する。
失礼だけど、寂しい家だと思ってしまったんだ……