過去作品集○中編
達也の家の事情。
後から少しだけど、翔くんに聞いてしまった。
達也のお母さんは、達也が幼い頃に出ていった事とか。
お父さんには、何人もの恋人がいるとか。
それを知ってからというもの、達也に対して妙に気を使うようになってしまった。
そう。
まるで腫れ物に触るみたいに……
そんなある日の事だった。
もうすぐ付き合って2ヶ月になる頃。
『いつも翔と2人で何話してんの?』
達也はそう言って、冷たい目で私を責めた。
『それは……』
達也の事を相談したり、家庭の事情を聞いたり……
勝手な事をしている事に後ろめたさもあって、答えられなかった。
『もういいや』
そんな私に、達也が言う。
『最近、楽しくなさそうだし。 俺もめんどくさい』
そんな……
ただ、達也を傷付けたくなくて……
それだけなのに。
『もう、あんたの事要らないよ』
私は、要らない存在になってしまった。
必要とされない事がどんなに悲しいか。
達也が一番知ってるはずなのに、いとも簡単に私を捨てる。
『翔んとこ行ったら? あいつ優しいし』
涙が、止まらなかった……