過去作品集○中編
あれから二年以上の月日が流れた現在。
高校を卒業して働きはじめたアクセサリーショップも、もう一年半もいる。
来るのは仲の良さそうなカップルや、恋人のプレゼントを選ぶ男の人、女の人ばかり。
『はぁー……』
一日に何回出るんだろう。
この溜め息。
『亜由美ちゃんどうしたの? 何か悩み?』
溜め息をついた私に声をかけたのは1年先輩の恵美子さん。
美人でスタイルよくて、しかも彼氏持ち。
『何か、カップルばっかだなぁと思って……』
『あれ? 亜由美ちゃんは彼氏いなかったっけ?』
『……はい』
もう彼氏がいなくなってから2年以上になるだろうか。
高2の冬、達也と別れてから……
【要らない】
はっきりと拒絶する、その言葉が胸に突き刺さったまま、私は前に進めない。
また傷付くのが恐いんだ。
そしてもう一人……
少し前に一人で来て、桜の花がモチーフの指輪を買っていった彼。
少し背が伸びて大人っぽくなっていたけど、あの男の子は確かに翔くんだった。
達也と別れた後も、優しく励ましてくれた彼の事を私はきっと好きだったと思う。
告白はしなかったけど……
『あの、すみません!』
と、突然。
『聞きたい事があるんですけど』
小さな女の子から、声を掛けられた。
小さいと言っても幼いとかの意味じゃなくって、背が低くて華奢で……
お世辞じゃなく、本当にすごく可愛い女の子。
『私より4つも年上で、少し派手な男の人なんです』
『……はい?』
でも、ちょっと不思議ちゃん??
『そんな男の人が喜ぶものが欲しいんですけど、オススメってありますか?』
あ、あぁ。
プレゼントを見に来たのね。
『そうですね、こちらはどうでしょう? 最近入ったばっかの新作なんですよ』
私はガラスケースの中のネックレスやブレスレットを出し、彼女に見せる。
『わ、可愛ー……』
頬を染め、そう言う彼女に私も嬉しくなった。