過去作品集○中編



あれから二年以上の月日が流れた現在。
高校を卒業して働きはじめたアクセサリーショップも、もう一年半もいる。

来るのは仲の良さそうなカップルや、恋人のプレゼントを選ぶ男の人、女の人ばかり。

『はぁー……』

一日に何回出るんだろう。
この溜め息。

『亜由美ちゃんどうしたの? 何か悩み?』

溜め息をついた私に声をかけたのは1年先輩の恵美子さん。

美人でスタイルよくて、しかも彼氏持ち。

『何か、カップルばっかだなぁと思って……』

『あれ? 亜由美ちゃんは彼氏いなかったっけ?』

『……はい』

もう彼氏がいなくなってから2年以上になるだろうか。

高2の冬、達也と別れてから……

【要らない】

はっきりと拒絶する、その言葉が胸に突き刺さったまま、私は前に進めない。

また傷付くのが恐いんだ。

そしてもう一人……
少し前に一人で来て、桜の花がモチーフの指輪を買っていった彼。

少し背が伸びて大人っぽくなっていたけど、あの男の子は確かに翔くんだった。

達也と別れた後も、優しく励ましてくれた彼の事を私はきっと好きだったと思う。

告白はしなかったけど……



『あの、すみません!』

と、突然。

『聞きたい事があるんですけど』

小さな女の子から、声を掛けられた。

小さいと言っても幼いとかの意味じゃなくって、背が低くて華奢で……
お世辞じゃなく、本当にすごく可愛い女の子。

『私より4つも年上で、少し派手な男の人なんです』

『……はい?』

でも、ちょっと不思議ちゃん??

『そんな男の人が喜ぶものが欲しいんですけど、オススメってありますか?』

あ、あぁ。
プレゼントを見に来たのね。

『そうですね、こちらはどうでしょう? 最近入ったばっかの新作なんですよ』

私はガラスケースの中のネックレスやブレスレットを出し、彼女に見せる。

『わ、可愛ー……』

頬を染め、そう言う彼女に私も嬉しくなった。
< 40 / 120 >

この作品をシェア

pagetop