過去作品集○中編
こんなに真面目に仕事を熟した事は今までにあっただろうか。
いつも9時に終わるのが当たり前だったのに、5時の定時で終わらせた。
おかげで桜の服も何着か買えた。
何かをしていると、すごく楽なんだ。
何も考えないで済むから……
『……可愛い』
デパートから出ようと駐車場に向かう途中。
俺の足を止める物があった。
真っ白で小さな布の靴。
『お祝いに喜ばれますよ』
店員がすかさず現れて、そう付け加えた。
赤ちゃんって、こんな小さな足なのか……
靴だけなのに、なんか可愛いな。
服とかも、めちゃくちゃ小せぇじゃん。
『ラッピングも出来ますよ』
つか、買うつもりないんすけどね。
そう思いながらも、小さな靴から目を離せなかった……
『何その袋!?』
8時頃になってマンションに帰った俺を待っていたのは、桜の驚いた顔。
『桜の服だよ。 俺の服じゃ外に出られないだろ?』
サンタクロースみたいな大きな袋に入っているのは、仕事帰りに買った服達。
それを見せると、さらに驚いた様子だった。
『私、お金払うよ!』
同時に困ってるみたいだけど……
『いいってば。 俺が勝手に買ってきたんだし』
『……うん。 ありがとう』
ようやく聞けたお礼に、満足感を得てニコニコと笑う。
少し間を開けて、桜の口が開く。
『翔の彼女さんキレイだね』
何で知ってるんだ?と思った。
でも朝より綺麗になった部屋を見れば、察しはつく。
部屋の写真たてを見たな……
『部屋入ったんだ? 実は、昨日別れたからフリーなんだよね』
「マズイ事言った」
桜は、そんな顔をしてみせた。
『まぁ、写真も捨てなきゃいかんね』
そう言って笑ってみせ、話を終わらせる。
俺より傷付いてる桜の顔が見たくなかったんだ。
そんなの見たらケロンとしてる自分に、罪悪感がわくんだ……