過去作品集○中編

昨日のパーティーは夢だったんじゃないか……

そう思うくらいの日常が戻ってきた。

『いらっしゃいませぇ……』

いつもと変わらないお店。
いつもと変わらない私。


変わったのは達也に対する気持ちだけ……

確かに同情もあったかも知れない。
救ってあげたいと思ったのも偽善かも知れない。

でも、達也を愛したいと思ったのも事実だ。

一度は達也を本気で好きだった。

きっとまた、達也に惹かれてる。
今度は、達也の全てを知った上で……


『よう。 今日は元気なさそうじゃん!』

お昼を過ぎた頃。
カウンターごしに話しかけてきたのは……

『翔くん……』

『今からお店抜けれる? 達也の事で話があるんだけど』

『……うん、10分くらいなら……』

達也の事って……
やっぱり昨日の事なんだろう。




何とか言い訳して10分間の休憩をとる。

お店では話しにくいと、翔くんは私を近くの公園へ誘った。

『それで… 達也の事って?』

『うーん…… 何から話そう』

ベンチに座り、俯く翔くん。

『……昨日さぁ。達也は私のこと何か言ってた?』

『はは、酷い事言ったって落ち込んでたよ』

『もう…… 達也ってば、翔くんに言ったのね』

昔の仕返しかしら?
私が何でも翔くんに言い付けてたから。

『昔は、亜由美のほうが俺によく相談してたのにね』

なんて言って、翔くんは笑う。

翔くんも達也も……
二人とも少し丸くなったみたい。

桜さんの影響かな?
そう思うと少し寂しいけど、今のがずっといい。

『あん時、俺のせいで別れたようなもんだから、ずっと後悔してたんだ……』

『そんなっ…… 翔くんのせいじゃないよ』

あれは……
翔くんのせいとかじゃ全然なくて……

『私、あの時は翔くんを好きになりかけてたから…… 達也に全く違うなんて言えなくて…』

『……へ?』

翔くんは、予想もしてなかったというように口をポカンと開け、固まってしまった。

『もしかして、全く気付かなかった?』

『う、うん……』

やっぱり。
本当に鈍感なんだから……
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