過去作品集○中編
『あははは、鈍すぎだよ!』
『ごめん…… 桜にもよく言われるんだ』
そりゃ言われるよ。
だって、気付かない間に人を夢中にさせてる。
こんな人が恋人だったら素敵だけど、きっと大変だ。
翔くんこそ、桜さんがお似合いね。
『あー、笑った! 今はそんな感情ないから安心してね』
落ち込む翔くんを安心させるよう、そう言うと、ようやくいつもの笑顔を見せてくれた。
『じゃあ…… 10分経ったみたいだから行くね』
少しオーバー気味だけど、楽しかったから良しとしよう。
『あ、好きになってくれたお礼に、いい事教えてあげる』
お礼?
それに今さら好きになってくれたなんて……
『達也は亜由美が好きだよ』
……え……?
『この二年間。 亜由美を忘れるのに必死だった』
嫌だ。
そんな事言わないでよ。
……嬉しくなるじゃないの。
『亜由美は?』
意地悪しないで。
自分には鈍感な翔くんも、人の事には鋭いもの。
『……好きよ。 二年間、忘れたふりして過ごしてた』
口に出したら止まらない。
今、物凄く達也に会いたい……