過去作品集○中編
『桜散る、かぁ』
季節はすっかり変わり、桜は青い葉をしげらせていた。
『そろそろ新しいクラスも慣れてきただろう。 今から席替えをするから順番にクジを引いていってくれ』
担任の一言でクラス中に活気が溢れる。
正直、一番前じゃなきゃどこでも良い。
そんな風に思ってた。
まさかまた、
あの香りを嗅(カ)ぐ事になるなんて……
『おっし! 俺、41番』
そう言って立ち上がったのは、女の子の中でも人気の高い吉見。
何で人気があるのか不思議だけど、私は彼が苦手だった。
肌荒れ一つない白い肌に、
筋の通った鼻。
切れ長の目。
誠に似てるからだ。
それにしても、41番は羨ましいな。
窓際の最後尾。
うん。
一番魅力的な場所だ。
『夏乃は何番だったぁ?』
と突然、千里が横からのぞき込んだ。
『えっと、あ、42番だ』
私も最後尾だ。
しかも窓際から二列目。
『夏乃、42なの!?』
千里の一言で、クラスの女子の視線がこちらを向いた。
『夏乃の隣、吉見だよ!』
あ、それで皆の視線を感じるんだ。
私って商店街の福引は当たらないくせになぁ。
ちらっと後ろの窓際の席、41番の席を見ると、吉見が笑って手を振っていた。
かと思うと、腕を広げて口パクで「おいで」と言ってみせたり……
めっちゃ軽い……