過去作品集○中編
しばらく教室で休んだ後、吉見は濡れたまま帰っていった。
それから時間をずらすようにして、私も教室を出た。
昇降口に続く廊下には、所々に水たまりが出来ていて、吉見の行く先を示しているみたい。
『風邪ひかないのかな』
まぁ、馬鹿は風邪引かないって言うしね。
大丈夫でしょ。
次の日、見事に予想を裏切り、吉見は学校を休んだ。
うん。
風邪引かないってのは迷信だったな。
それに吉見の他にも休んだ人が、かなりいたし。
水遊びのメンバーかしら?
開いた隣の席を見ると、少し不思議だった。
昨日は、あんなに賑やかだったのに……って。
『伊東、悪いけど吉見にこれを届けてくれないか?』
と突然、担任がやってきて、
プリントを渡された。
プリントの端には赤ペンで、
「明日、絶対提出」と書かれてある。
って事は、今日中に届けろって事!?
『私、別に吉見と仲良くなんかないんですけど』
むしろ、隣の席になるまで、ほとんど他人だったし。
『大丈夫、大丈夫! 名簿に住所載ってるから、頼んだぞ』
先生はそれだけ言うと、強引に押し付け去っていった。
住所の問題じゃないっつの!