過去作品集○中編
絶対提出なんて書かれたら、届けないわけにはいかない。
こりゃ千里でも誘って、吉見ん家を探すか……
『この辺りだと思うんだけどなぁ』
放課後になって、
千里と二人、吉見の家を目指して歩いた。
一軒一軒、窓から覗いて吉見の姿を探す。
途中、通り掛かったパトカーの中の警察に睨まれた……気もする。
『住所だけじゃわかんないよねー』
千里は不服そうに言うと、信号の無い四つ角を左に曲がった。
この道、知ってる。
この細い路地を抜けた先には、白い大きな家があるんだ。
そう。
誠の家が……
最悪だ。
まさか、吉見ん家が近所だったなんて。
ようやく路地を抜け、広い道に出る。
あった。
誠の家が……
二階の誠の部屋には、まだ電気が着いていない。
それを見て、ホッとしてしまう自分が弱くて、情けなかった。
『夏乃?』
と突然、後ろから名前を呼ばれる。
少し低い、あいつの声だ。
『誠……』
『久しぶり、だね……?』
誠は気まずそうに髪をクシャっと触る。
目を合わせたくなくて、横を見ると、千里まで気まずそうに頭を触っていた。
『今時間あるかな? ちょっと話したいことあるんだけど』
誠は、そう言って笑顔を見せる。
「そんな暇ねぇよ」
って冷たく言ってやろうかと思ったけど、
『私、クラスの子にプリントを渡さなきゃいけないから』
誠の、寂しそうな笑顔に負けたみたいだ。
しばらく無言で立っていた私達に痺れをきらしたように、千里が口を開く。
『あいつには私が届けておくから行っておいでよ』
って……
そんなに気を使われたら、さすがに振り切る事が出来ない。
それに誠の顔も、切羽詰まっってるみたいな、そんな顔だし。
『じゃあ、話だけなら』
まぁ、話くらいいっか。