過去作品集○中編
あの日と同じ曇り空。
シトシトと降る雨。
こういう天気だと、やっぱり思い出す。
あの光景を……
『それで話って?』
いつまでも話し始めない誠に、イライラが募る。
『うん。 まずは、ごめんなさい』
パンッと、誠は手を合わせて謝った。
その行動は、予想してなかった。
だって、誠が謝るなんて事は今まで一度もなかったから……
『浮気なんてしたのが馬鹿だった。 本当にごめん……』
ごめんなんて言葉だけじゃ片付けられないよ。
あの日、すごく悲しかった。
大好きだったのに、
あんな裏切り方……
でも、
『もういいよ。 気にしてない』
どうしても嫌いになれないから、こう言うしかない。
本当は、ぶん殴ってやりたいけど。
それすら、可哀相と思ってしまうんだ。
『じゃあ、やり直してくれるの?』
『……え?』
…即答出来なかった。
確かにまだ好きだけど、
何処かまだ不安なんだ。
またあんな事になるんじゃないかって。
『返事はまだ待って。 少し考えたい』
『……うん。 でも俺、あんま気ぃ長くないから』
誠は、少し寂しそうに笑って、そう言った。
似てる……?
そんな顔が、やっぱり吉見と似てる。
まぁ、吉見も顔だけはいいしね。