過去作品集○中編

『吉見! 昨日借りたやつだけど』

昼休みになると、千里は一番に吉見の席に来た。
親友の私より先に……

『あー…あれね。 濡れんかった?』

吉見も笑顔で答えてる。

何だよ何だよ。
私には、冷たい顔するくせに。

『平気だったよ。 今日持ってきたから帰りに返すね』

私が誠と会った日、一人で吉見のもとに向かった千里。

そこで何があったのか私にはわからないけど、
二人の距離が縮んだ事は確かだった。


『吉見から何か借りたの?』

気になって声を掛けると、千里より先に吉見と目があった。

『冷たい俺とは、会話しないんじゃなかったっけ?』

人を馬鹿にするような目。
苛々する。

『別に、吉見に言ったんじゃないもん』

千里に聞こうと思って……

『プリント持ってく途中で雨降ったでしょ? だから吉見が傘を貸してくれて』

険悪なムードを和らげようとしてくれてるのか、千里は無理矢理な笑顔を見せる。

そんな様子を見て、自分の馬鹿さに呆れてしまった。

千里にまで心配させるなんて……って。
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