過去作品集○中編

桜の彼氏が指定したのは、マンションから少し離れた公園。

夜の公園は静かすぎて、桜を余計に不安にさせる。

『俺、入口にいるからヤバくなったら呼べよ』

『うん』

近隣には住宅。
よっぽど変な事にはならないと思うけど……

しかし、まさかこの公園が「桜と彼氏がよく会った所」なんてね……

ここはユカが俺に告白した公園。
そして俺たちは初めてのキスをした。

変な所で繋がってんだな。
俺と桜は……


《~♪~♪》

と、突然ポケットの中の携帯が鳴った。

『……ユカ?』

ユカからの着信。
そういえば、まだメールも読んでなかったな。

《もしもし……ユカです》

『うん、久しぶり』

《あのね、メール見てくれた?》

『ごめん…バタバタしてて見れなかったわ』

俺がそう言うと、「そっか」とだけ言って電話を切られてしまった。

「まいった」と思いながら渋々メールを開く。

また文句でも書いてあんじゃねぇの?



「今、あの公園にいるの。 あの公園ってドコかわかるかなぁ? わかったら来てほしいです」

メールは、そう書いてあった。

馬鹿野郎。
あの公園なんて、一つしかねぇだろ。

俺は全速力で公園をグルリと一周した。

そして入口にもどった時……

『翔……?』

ユカがいた。
ユカはホッとした顔をして笑ってみせた。

『翔、来てくれたんだ。 あのねー……今日、手術終ったから』

『……うん、一緒に行けなくてごめん』

『ううん。 日にちも言わなかったし』

用はそれだったのか。

そうだよな。
相手は俺だ。
伝えるのは当たり前だろう。

『あのさ、翔に話が……』

ユカが顔を上げ、そう言いかけた時だった。

『翔!! っ翔!?』

遠くの方で自分を呼ぶ声がしたのは。

……桜だ!

『今、誰か翔の事呼んだよね?』

ユカも気付いたようだった。

『話はまた今度な! 危ないからついてくるなよ!?』

俺はユカにそう言ってその場を立ち去った。

二度目の全速力。

桜……
無事でいてくれ!!
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