過去作品集○中編

『夏ぁ乃!』

昼休みは、いつも千里が私の席に来て、話しながらの昼食がはじまる。

今日も同じように……

『昨日は先に帰っちゃうんだもん酷いよー』

なんて。
笑いながら千里を責めたりして。

『ごめん、ごめん。 昨日は吉見に用があったからさぁ』

そんな私に対し、千里は少し顔を赤らめて髪をいじった。

え?
その反応って……

『千里、もしかして……』

そう言いかけたと同時、教室のドアが開いて、吉見が帰ってきた。

『千里! お前、俺の席に堂々と座りすぎ』

吉見はツカツカと歩いてきて、千里にデコピンをくらわした。

くらった千里はというと、
みるみる顔が赤く染まって……

そうか。
やっぱり吉見の事を。

『ごめんね! すぐどくから』

千里は急いでお弁当箱を片付けだす。

『そのまんまでいいよ。 俺、こっちに座るから』

と、言いながら吉見が座った所。
それは私の席だった。

『よよよっ! 吉見!?』

一つの椅子に、二人がちょこんと座っている状況。
背中はぴったりくっついて、隙間なんか全く無い。

た……
耐えられない!!

バッ!!
……と、立ち上がって他の席に移動する。

有り得ない。
有り得ないよ!

しかも、千里の目の前で!!

『めっちゃ俊敏な動き。 夏乃ってマジで面白いよなぁ』

『あはは!』

吉見と千里は顔を見合わせて笑った。

でも……
千里、上手く笑えてないんだよ……
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