過去作品集○中編
『送ってくれて、ありがとう』
電車の定期券の範囲内だからと言って、吉見は家まで送ってくれた。
電車でバイバイでも良かったのに、こんなにされたら申し訳ないくらい。
『この間のプリントのお礼も兼ねてだよ』
なんて笑うけど、辺りは暗くなりかけてる。
『遅くなって平気? 危なくない?』
『大丈夫だって。 女じゃないんだから』
私は、吉見を誤解してた。
軽くていい加減そうだって、勝手に決めつけてた。
本当は違うのに……
『私、吉見がモテる理由が、少し解ったかも』
少し見方を変えただけで、こんなにも魅力的になる。
『今まで誤解してて、ごめん』
今は隣にいる事が、前より嫌じゃないよ……
――――――――――――
from 誠
sub 無題
――――――――――――
昨日はごめん!
お詫びと言っちゃ何だ
けど、今度の休み飯で
もおごるわぁ
-END-
――――――――――――
次の日の朝に入ったメール。
文章は素っ気ないけど、誠からってだけで嬉しくなる。
私、誠を信じるって決めたんだけど、
間違ってないよね?
『ふふふ~』
『何だよ、ニタニタして気持ち悪ぃなぁ』
授業中、何度もメールを読み返して、つい顔を緩めてしまう。
それを「気持ち悪い」なんて失礼だぞ、吉見!
『彼氏と何かあった? 朝からずっとニヤついてる』
『実はねぇ……』
と、言いかけたと同時「長くなりそうだから暇な時にしてくれ」とストップをかけられた。
いつも暇なくせに……
誠と出かけるのは初めてじゃないのに、
でも、やっぱ嬉しいよね……?