桜の雪
上目遣いに睨まれたって、怖くない。

「ええ、先輩に嫌われたくないですから」

「キライになるワケないでしょ!」

「でも不安ですよ。オレの方から先に、好きになったんですし」

「すっ好きになるのに、先も後も関係ないでしょ! あっ愛情で大事なのは、深さなんだから!」

「そうですね。オレは先輩に深く愛されていますしね」

「なっ!? あっあなたって人はー!」

ポカスカ叩かれるも、痛くない。

「んもうっ! …副委員長に任命したのは、あなたが年不相応にしっかりしているから! こっ恋人に選んだのは…」

真っ赤な顔で眉をしかめながら、彼女は言った。

「うっ運命かな?って思ったからよ」

「運命?」

「そっ。だって出会い方、ある意味フツーじゃなかったでしょう?」

「…まあそうですね」

天気が不安定な日に、普通の人は訪れないであろう山登りをして、出会ったのだから。

「出会い方もアレだけど…。次の日、同じ委員会で再会するのも、運命的でしょ? …しかも告白してくるんだから」

「告白は運命じゃないんですか?」

「…それだけは予想していなかったわ」

「ははっ」

「しかも一目惚れなんて…。逃げ出した女の子に言う言葉じゃないわよ」

「逃げられたんですか? やっぱり、アレは」

「ひっ人に見られると、マズイ現場だったから」

後から聞いた話だと、細かい打ち合わせにイヤ気がさして、ウソをついて委員会を抜け出したらしい。

なのに同じ学校の制服を着ているオレを見つけて、慌てて逃げ出したらしい。

だからオレがはじめて声をかけた時、知らぬフリをしたのだ。

「ウソはいけませんよ、先輩」

「わっ分かっているわよ! 十分に反省しました!」
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