One's time《短》

自分の時間に入り込んでしまったマリカにほったらかしにされている俺は、他人から見れば可哀相な男に見えるだろう。

だけど、俺はこんな時間が嫌いじゃない。

むしろこの独特の空間、というか時間の流れ方が好きだった。


……学校では変わり者だと皆に敬遠され、俺以外、友達がいないマリカ。

でも、俺からすればマリカを世間の時間で動かそうとするから駄目なんだ。

マリカと接するときは、マリカの時間に合わせて自分も動く。

それさえ心掛けていれば……まあ、それでも変わり者ではあるけれど、会話が成り立たないほどではない。


「アマネ」

時間の流れに戻ってきたらしいマリカの俺を呼ぶ声に、俺は手を止める。

ほら、な。マリカの時間を侵害しなければ、こうやって話しかけてくるんだ。

俺は一人満足して、体ごと後ろに向けた。
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