One's time《短》

それは、ほんの数秒の出来事。

俺からゆっくりと離れていったマリカの顔は、満足げに笑っている。

そんなマリカとは対照的に、俺は完全にパニックに陥っていた。

鏡がないから確かめようがないけれど、今、俺の顔はとてつもなくマヌケだと思う。


「私のキス。間違ってなかった?」

そんな俺の様子を全く気にしない、マリカの真剣な表情。

だけど、俺にはもう、その言葉の意味を理解する余裕は全くなくて。

「なんでキスしたんだよ!?」

そう叫ぶ事しか俺には出来なかった。

するとマリカはその真剣な顔を、キョトンとした表情にかえて。


「だって、付き合ってたらキスするんでしょ?」

そんな台詞を言い放った。
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