One's time《短》
俺はポケットから合い鍵を取り出して、今にも外れそうなドアの鍵穴に差し込む。
合い鍵は五回目にこの部屋に遊びに来たとき、マリカに渡された。
どうやら俺が来るたびに鍵を開けるのが面倒臭いらしい。
「入るぞー」
無意味だとわかっているけど一応、そう声をかけた。
ドアを開けて玄関に足を踏み入れながら、同時に靴を脱ぐ。
玄関から入ると右手にはトイレと風呂。左手には三畳ほどのささやかな台所。
脱衣所はカーテンで目隠しされてるけど、台所はシンクの中まで丸見えだ。
ちなみにこの部屋に廊下は存在しない。
台所を二歩進んで、黄ばんだ襖を開ける。
すると、そこからひんやりとした空気が流れ出てきた。