王様とアタシの絶対恋愛制度


「どうぞ、凪紗様」


扉が開き切ったところで
紫野さんに導かれゆっくり部屋に足を踏み入れた


綺麗なフローリングの床


いや、そんなことを思っている場合じゃない


でも…でも…


顔を上げる勇気が…


「坊っちゃん、凪紗様でございます」


あたしは扉が閉じたのを確認すると意を決して


顔を上げた


「え?」


思わず、間抜けな声が漏れる


あたしの目線の真っ直ぐ先にあるのは


丸くて、くりくりした瞳


「遅い!待ちくたびれたよ…」


無造作にセットされた髪は黒色で


色白で小さな顔が大きな目をより引き立てている


「もっと近くにおいでよ」


そう手招きされたが躊躇った


「あなたが、王様?」


「そう、俺が王様」


うそ……


ただ、単純に驚いた


王様ってこんなに若かったの?


唖然と立ち尽くすあたしが可笑しかったのか
高級そうな椅子に座っていた王様は微笑して


ゆっくり立ち上がる


「検討違いだった?」


王様が足を進めるたび縮まる距離


あたしは歩み寄ることも、後退りも出来ない


まるで石像にでもなったように


「でも、僕も検討違いだったよ」


気が付いた時には王様の整った顔とあたしの顔は


ほんの数センチの距離しかなくて


「本物の方が、検討違いなくらいかわいい」


そんな台詞は息がかかるほど耳元で囁かれた


< 48 / 67 >

この作品をシェア

pagetop