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旅行当日
準備を終えた私達の元に突然『父が倒れた』
との連絡が入った
父が担ぎ込まれたという病院へ向かう母に
「私も行くよ」
と伝えたが
『梨加ちゃんだけでも行ってらっしゃい
海外旅行なんて次に何時行けるか分からないんだから』
と言われ、私は一人寂しくイタリアの街を訪れた
でも、イタリア語は愚か英語すらまともに話せない
私にとって今の状態はかなり厳しいものがある
それに・・・
やはり倒れた父の事が心配だ
(早くホテルに戻ろう)
そう思い、来た道を戻ろうと振り返った時のこと
『・・・・・梨加・・・・』
不意に誰かに呼ばれた気がしたのだ
私は振り返るのを止め、声の主を探すように辺りを見回す
けれど、ここはイタリア
私を知る人など居る筈がない
多分聞き間違いだろうと
再び来た道を戻ろうと思うのに・・・
“誰かに呼ばれている”
その考えは拭え切れなくて・・・
気が付くと私の足は歩きだしていた
進むべき方向とは反対方向へ