さよならLetter
ルウコを見送って、抱きしめた感触が何となく恥ずかしくて照れくさくて、でも嬉しいような変な気分だったから、授業に戻る気もなんとなく失せてしまった。
(次は・・・化学か、まぁいいや)
ボクは授業に出る事はパスして、いつもルウコと過ごす図書室へ向かった。
授業中の図書室はガランとしていて、図書館司書を引退して学校図書の職員になったオバサンだけがいた。
「あら?今日は1人?」
オバサンに声を掛けられて「まぁ・・」と曖昧に笑っておいた。
そして、何となく気になっていた事を思い出した。
「あの」
オバサンに声を掛けると、ハードカバーの本を読んでいたオバサンが見上げる。
「ここにいつも来る、柏木流湖がいつも見てる本ってどれですか?」
ルウコが読んでるあの分厚い本、ボクがくるとパタンと閉じてしまうあの本は確か図書室の本だった。
「柏木さん?・・・あぁ、あなたと一緒にいるキレイな女の子ね」
オバサンはようやく理解したみたいで笑顔になった。
「何か、グレーの分厚い本なんですけど・・・」
オバサンはちょっと考えて、席を立った。
「あの子が読んでるのは確か・・・、貸し出しした事ないから自信はないんだけどね、ついてきて」
ボクはオバサンの後を追った。
デカイ本棚をザっと見て「あ、これだと思うわよ」と、ボクに一冊の本を手渡してきた。
多分、ルウコが見ている本。それは『循環器 (難病)』と書いてった。