さよならLetter
ルウコの秘密
何でだろう・・・?
ボクはボールをトントンとリフティングしながら妙な胸騒ぎがした。
胸騒ぎなんて滅多にない。そして当らない。
「高柳ー!遊んでないでシュート練習しろー!!」
顧問の怒鳴り声が聞こえたから手を上げた。
ボクなりの「わかった」という合図。
フリーキックの練習中で、左利きのボクは当たり前だけど左にボールをセットした。
ちょっと離れて、また戻ってセットし直し。
「先輩がフリーキックちゃんとやるなんて珍しいっすね」
後輩が声を掛けてきてビックリする。
「え?オレ?」
「オレ・・・高柳先輩に話し掛けたんですけど」
後輩は困った顔をしている。
「あー、スペインだったよな優勝。オレ密かにマラドーナ効果でアルゼンチンかなーって思ってたけど」
「先輩、オレ、ワールドカップの話なんてしてませんよ」
「あ、そうだっけ?何だっけ?」
ボクが愛想笑いをすると、
「高柳ー!セットに何分かかってるんだよ!」とまた顧問の怒鳴り声。
またぼくは手を上げて、今度こそ集中して思い切りボールを蹴った。
ザっといい音がして、ボールはゴールの中へ吸い込まれて行った。