さよならLetter
周りがワっと騒ぐのに対してボクは複雑だった。
ボクはそんなにフリーキックが得意ではない。
だけど、あっさり決まった。この妙な感覚は何だろう?
「高柳、マジメにやれば出来るじゃないか」
顧問が笑顔言うのにも、「まぁ・・・」と曖昧にしか返事が出来なかった。
もう一度、ボールをセットしてみる。
さっきとは全く違う角度。
(外れるか、よくてポストに当たって終わりだな)
そう思って蹴った。
でも、結果は見事なゴール。
「先輩スゴイっすねー」
さっきの後輩が声を掛けてきたけど、違う。何かが違うんだ。
何だろう・・・シャツのボタンを掛け違えたみたいな違和感がある。
「先輩?」
「え?あぁ、何か今日のオレって調子いいな」
笑って返事をした。
何かが違う・・・。
この胸にあるギザギザした違和感と不安は何だろう?
『今日は法事があってね、学校早退して明日もお休みなの』
今朝、ルウコがボクが書いた手紙を手にしながら言った言葉がよぎる。
法事じゃないか。だから何だっていうんだ。
早退して寂しいとかそんなんじゃない。
この不安はルウコからくるものなのか?