さよならLetter
バコン!という音と共にフェンスの一部がへっこんだ。
ボクの足の形通りに凹んだフェンスをみて、笑いが込み上げてきた。
「さすがサッカー部」
自分で言って、また笑ってしまう。
屋上の扉が開く音が聞こえて笑うのを止めた。
ルウコかもしれない、そう思った。
背中に緊張が走る。
顔を向けたら笑顔でいつもと変わらずにいよう、そう決めた。
ボス!
脳天をチョップされたみたいで結構な傷みがくる。
「いってぇ!」
振り向くと、明日香がニヤリと笑った。
「明日香?」
ボクが驚いていると、チラシみたいな物を渡してきた。
「夏フェスのチラシ。みんなで行くんでしょ?」
チラシに書いてあるアーティストの横に○がついている。
「この○は何だよ」
「ルウコがつけてた。見たいアーティストなんじゃない?」
ルウコの名前を聞くとドキドキした。
「ちなみに△はあたし。幹太はまだ印つけてないんだけどね」
明日香はいつも通り、何も変わらない。
「ふーん、オレはどれかな?」
ボクもいつも通りに明日香に振る舞った。
座ってチラシを眺める。
その隣に明日香が座る。
「ソウちゃん、無理しなくていいんだよ」
「え?」
「誰でも驚くし、戸惑うし悩む。それは普通なんだからさ」
明日香はチラシを覗きながら淡々と喋っている。
「あたしが初めて知った時には3日は寝れなかった。だって目の前でいきなり倒れて意識不明になったんだから」
「え?」
「体育でね、見学してたルウコにつまんないでしょ?って一緒にバレーやろうよって誘ったの、そしたらいきなり倒れて…ルウコも普通にやるやるって言うから…甘かったんだね。危うく殺しかけた」
ボクは明日香を見ていた。チラシに目を向けたまま早口に喋っている。
「あたし救急車に一緒に乗って、何てことしたんだろうって泣いちゃったの。でも、目が覚めたルウコはバレー楽しかったって笑顔で言ったの。それでわかったの。ルウコは病気だから特別に扱われたくないんだって。普通に接してほしいんだって」