さよならLetter

家に帰って夕飯を食べていると母親が買ってきた医学書を見て首を傾げている。


「これ…アンタが買ってきたの?」


母親の言葉に「そうだけど」と返事をした。


「医者にでもなろっていうの?」


向かえの席に座っている大学生の姉貴が笑い出した。


「別に。ただの調べもの」


ボクが淡々と答えると、姉貴は面白そうに見てきた。


「何だよ」


「病気がちな彼女でも出来たの?」


「はぁ?」


「高校の同級生に会ってさ、ソウがすんごい美人と歩いてるの見たって言ってたのよ」


姉貴はボクにではなく、母親に喋っている。


母親は呆れた顔でボクを見た。


「ソウがそんな美人とお付き合い出来るわけないじゃない。本当だったら是非紹介してもらいたいもんだわ」


「お母さん、それがかなりの美人さんらしいのよ。友達もビックリしたって」



姉貴と母親のやり取りを無視してボクは食べた茶碗を台所に下げた。


「ソウ」


母親から医学書を受け取って、部屋を戻ろうとするボクを姉貴が呼び止めた。


「何?」


「彼女が病気とかなの?」


少し心配そうな顔。


「何でだよ。美人薄命とか信じてんの?」


「いや…何か、最近のアンタ、深刻そうだよ。雰囲気とか」


ボクはその言葉に笑った。


「いつもと変わんねぇよ。姉ちゃんこそ深刻そうだけど、彼氏に振られたのか?」


「振られてないわよ。バーカ。心配して損した」


文句を言っている姉貴を横目にボクは2階の自分の部屋に戻った。


部屋のドアを閉めて思わず顔に手をやる。




ボクは深刻な顔をしているのか?
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