紙ヒコーキ~君に届け



俺らはすぐに帰る支度を始める


「うしっ。酷くなる前に早く帰るかっ」

まだ雨が小降り程度でびしょ濡れにはならなかったのが唯一の救いってとこ


「んじゃ俺と由美はこっちだから。またなっ!」


「今日はありがとねっ」


2人は手を振りながら帰って行く

だから俺と美幸と2人だけになる。


「冷たぁっ。あ、でも今日は楽しかった!」


美幸が笑う
それにつられ、俺も笑った。


「新しい水着…似合ってたかな…?」


美幸が言ったことに俺は彼女のあの姿が思い浮かんだ。


似合っていた

そう言うつもりだった


「べっ別に…」


自分でも分からない言葉が出てきた。


…俺、今何て言った?


「えっ、あ…ち、ちがっ…」


言葉が…出ない


「そう…だよねっ。あ、私こっちだから。今日はありがとっ!」


口を開いた美幸は
そう言い残して行ってしまった。


「あっ…」


呼び止めようとしたけど遅かった。


「…」


少し混乱していただけなのに
こんな事を言うつもりじゃなかった…


俺はずっと立ち尽くしていた。


小降りだった雨も
いつの間にかどしゃ降りになっていた


「何やってんだよ俺…」


雨に罰を与えられるように
その罰を受けるように

ずっと

立ち尽くしていた。

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