TRUMP
「あ、あの白のワンピースの方なんですけどぉ」


「オレが代わる。蘭、ハートのトランプだ」


とだけ伝えると、智也さんは、女性を連れて奥の部屋へ入って行った。



なに?



あっちの部屋って、確か、ビップルームがある部屋だよね。


扉しか見たことないけど、扉には、ビップルームって、ゴールドの文字で書かれてた。



あの女性客、ビップルームの人なの!



うひゃ〜!



ハートのトランプっていう、パワーストーンがあるんだぁ。



みた〜い。



智也さんの後ろ姿を見送っていると。


「藍、倉庫整理してくるから」


蘭さんも、お店からいなくなった。



なんなのよ!



なんで、簡単にいなくなっちゃうのよ!



これじゃあ、いつもと変わんないじゃない。



あたしは、ふくれながら、いろいろ石を見ていった。



そういえば、この前智也さんの読み通り、ローズクォーツが売れてたなぁ。



すごかったなぁ。



智也さん。



「恋愛で悩んでいるのなら、ローズクォーツがお勧めですよ。石も、買ったからとすぐに、開封するよりは、何か記念の時に開封すると効力が増しますよ。あ、そういえば、明日は満月です。ローズクォーツは、月光浴の浄化作用も使えるので、本日購入すれば、明日の満月のパワーをいただいて、よりいっそう、このローズクォーツに恋愛の力がみなぎることでしょう」


と言葉たくみに、ローズクォーツを昨日だけで10万売り上げていた。



確かに、強制ではないんだろうけど、イケメン智也さんにすすめられたら、買わない女の子はいないんじゃないの?



強制と、智也さんの接客術が、紙一重なのがわかった。


でも、多少は売り込みしないと、売れないと困るもんねぇ。



あ、オニキスが減ってる。



ちょっとだけ、補充しとこうかな。



どうせ上で、蘭さんが在庫整理してるんだから、取ってもらお。


あたしは、2階へ繋がる階段を上がった。


この階段、倉庫の中に繋げてくれればいいのに。




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