TRUMP
ま、期待はしてないからいいけど。



あたしは、学校のカバンを棚に置いて、ネクタイを外し、第一ボタンを外して、手を止めた。


「……あの」


「……」


横目で海斗さんを見ると、テーブルの上に足を投げて、紅茶を飲んでいた。


「あの!着替えたいんで、出てってもらえませんか!」


「あぁ?」



でた!



海斗さんの”あぁ!”。



ウゼェナァ!とでもいいたげな少し語尾の上がる強気とも威嚇ともとれる言葉。


「着替えたいんで、出てってください」


念をおすように、もう一度言った。


「勝手に着替えろよ。オレ今、休憩中」


「き、休憩中でも、海斗さんにいられたら、着替えができないじゃないですか!普通出て行くでしょう?」


「うるせぇな。お前の着替えなんか見たって、欲情しねぇから安心しろよ」


「な!」


「てめぇの貧乳見たって、感じねぇんだよ、バ〜カ」



カッチ〜ン!!!



貧乳ですってぇ〜!!



ずいぶん言ってくれるじゃないですか!



「見てもないくせに勝手なこと言わないで下さい!ヤ、ヤラシイ物買って喜んでるような人に言われたくないですけど!」


その言葉にはムカついたみたいで。


「んだとぉ〜!オレがいつ何買ったってぇ!!」


立ち上がって、ブラウスの襟を両手で掴むと、壁に押し付けた。


「イッタイ!何するんですか!離して下さい!」


「下っ端のくせに生意気なんだよ!」



生意気って。



「てめぇは一度礼儀ってのを教えとかなきゃと思ってたんだよ」


「……礼儀?」


「先輩に対して敬うって態度がねぇんだよ」



はぁ〜?



「敬ってもらいたいなら、お店で先輩らしく仕事してくださいよ」


「なんだと!」


「いっつもサボってばかりで、どこを敬えってんですか?いい加減に、手、離してくださいよ!」


「てめぇ〜!女じゃなかったら殴ってるところだぞ」


あたしは、海斗さんの手首を掴んだ。




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