TRUMP
会話は聞こえなかったが、突然男性が、智也さんに向かってパンチを入れた。

智也さんはそれに対応出来ず、お腹を抱え地面に倒れた。

「智也さん!」

あたしは、あまりの出来事に思わず駆け出していた。

男性は、ボクサーポーズをとった。

「バカッ!来るな!」

海斗さんは、男性との距離を保ちつつ、なかなか攻撃が出来ないでいた。

そして、パンチを入れようとして、避けられ逆に二、三発殴られていた。

「海斗さん!」

あたしは、のびてしまった智也さんを救出しようと近づこうとしたが、海斗さんに。

「来るなっつってんだろ!」

と怒鳴られた。


だって!


智也さん倒れてるのに、危ないじゃない!


喧嘩するなら、もう少し離れてやってよ!


声には出さなかったけど、思っていた。

すると、一台のトラックがやって来た。

道路で乱闘している二人に対してクラクションを盛大に鳴らした。

あたしは、智也さんのところにたどり着き、智也さんに声を掛けたが、智也さんは目覚めなかった。


この位置、ギリ危ないって!


「海斗さん!智也さんどかさないと!引かれる!」

トラックは人がいるのに、何故かクラクションを鳴らし続け突っ込んで来た。


ちょ〜!


なんなのよ〜!!!


智也さんを持ち上げようにも身長差がありすぎて無理だった。

「海斗さん!早く!」

「お前っ!この状況見て判断しろよ!コイツ捕まえて聞きてぇことあんだよ!」

といった。


この状況で何を聞きたいのよぉ!!


もぉ!!!


「じゃあ、海斗さん智也さん助けてくださいよ!私その人捕まえますから!」

「バカ!フザケンナッ!」

「早く!トラック来ちゃう!」

「無理に決まってんだろ!あ〜チクショ〜!!室長!!」

「海斗代われ!」

突然第三の声が聞こえた。

と同時に海斗が智也目掛けてダイブした。

あたしは、男性の前に立ちはだかると、ジャンプして回し蹴りをお見舞いし、目眩を起こした男性の衿を掴むと強引に壁に叩きつけた。

その間をトラックは一度もブレーキを踏まず走り去って行った。



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