TRUMP
すんなりと足が運ばなかった。

ゆっくり、ゆっくりと、一歩ずつドアに近づいて行った。

ドアの前に立ち響さんを見た。

「どうぞ。靴もぬがなくていいよ」

響さんが、中へ促した。

あたしは、深く深呼吸すると、意を決めて、中へ入って行った。

その後を響さんも入った。

ガチャッ!

とドアの鍵を閉められ、警戒したが。

「ごめん。誰にも入ってほしくないんだ」

といわれた。

「そこのソファーに座ってて、今飲み物持ってくるから」

優しく微笑んで、響さんはキッチンへ向かっていった。

取り残されて、部屋をみまわした。

壁をぶち抜いたのか、一室が広かった。

長いガラス張りのテーブルとソファー。

少し離れて沢山の本棚とアンティークな机とイスが置いてあった。

壁の周りは、ローボードやら棚やらでうめつくされ、その中はよくわからない書類が沢山詰め込まれていた。

中には、西暦順に並んでいる書類もあった。

アンティークな机に進むと”報告書”とパソコンで印字したと思われる、A4サイズの用紙を見つけた。

あたしはそれを手に取った。

「被害者はストーカーに悩まされている」


ストーカー?


小説?


「調べた結果、同じ階に住む男が浮上……」


「お待たせ、藍ちゃん」

トレイにサーバーとティーカップを乗せて、響さんが戻って来た。

あたしは慌てて用紙を机に置いた。

「飲みながら話そうか」


み、見られたかな……。


ドキドキドキドキ。


「さ、紅茶入れたから座って」

とソファーに促された。

あたしは机から離れて、窓際のソファーに座った。

響さんはそのままキッチン側のソファーに座った。

「ハイ、どぅぞ」

響さんが紅茶を差し出してくれた。

「ありがとう、ございます……」

あたしは入れてもらった紅茶を一口飲んだ。

「何が聞きたい?」

「ゴホッ……」


前置きなしで切り出されてむせた。

「大丈夫?」

「は、はい」



< 35 / 41 >

この作品をシェア

pagetop